忍者ブログ

[PR]

2024年05月19日
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

室井アリアさま・そのさん

2010年03月22日
フリー配布のハロウィンなイチウリ小説ですよ~!ハロウィンすごいな~(笑)
--------------------
I'm scared !






「トリックオアトリート」
「なに?」
「ハロウィン。知らねえの?」
 またもやアポなしで雨竜の部屋にやってきて、そして無遠慮に裁縫をしている彼を見詰めていた男が唐突に言った。
「君、クリスチャンじゃないだろ」
 ――なにを言い出すのかと思えばハロウィンだと?
 怪訝そうな雨竜の表情は、そんな風に言っているように見える。

 確かにこんなイベント、日本ではあまりメジャーじゃないだろう。
 最近はそうでもないかも知れないけれども、本来の意味なんて知っている人は極少数だ。そして、自分も由来など知らない大多数の一人。
 クリスマスだろうとなんだろうと、信仰心なんかには関係なくお祭り事の好きな人種だ。楽しめそうならば取り入れるのが日本人なのかもしれない。細かいことなど気にしないのだ。

「そりゃ…違うけど」
 質問に対して即答する一護に、雨竜は少し複雑な顔をしてから答えた。
「……そうだよね」
「あ? なんだ、今の間」
 微妙にレスポンスが鈍かったことに対して一護が突っ込む。口の中で唸っていた雨竜は、笑いを噛み殺したような顔で
「いや、クリスチャンな死神って、面白いなと思ってさ」
 なんて言った。
「なんか、もうお前…」
 呆れた一護は感情を隠しもせず雨竜の額を人差し指で小突いた。
「概念がごっちゃになってるだろ」
「概念って言うか…うん、現実ってこんなもんだよね」
「なに言ってるかサッパリ解んねえぞ」
 したり顔の雨竜の額を一護はもう一度小突いてから、テーブルに頬杖をつく。小突かれた額を不愉快そうに撫でた雨竜は、もう作業に戻っている。数秒口を開かなかっただけで視線は自分から外されてしまっていた。
 ――つまらねぇ。
 置いてけぼりな一護は舌打ちして、もう一度呟いた。
「トリックオアトリート」
「…………」
 視線を感じて顔を上げると、雨竜がじっと見詰めている。
 なんだろう、と眉を顰めると、雨竜は黙って立ち上がった。
 そして、棚の所からなにやら持ってきて一護の目の前に置いた。

 ざらっと盛られているのはお菓子の詰め合わせ。
 カラフルなパッケージに包まれたクッキーやチョコレートだった。

「はい、Happy Halloween」
「なに、コレ」
「え? 黒崎お腹すいてるんじゃないの?」
 先にクッキーを取って、口に入れながら雨竜は言う。
「Trick or Treatって言われたら、こう言ってお菓子渡すんじゃなかったっけ」
 妙に発音が良いが、また癪に障る。どうせ自分は英語の発音は上手くない。そういやコイツ、学年トップ…ぼうっと思い出しながら、一護はチョコレートに手を伸ばした。
「よく知らねぇや」
 自分がハロウィンについて知ってるのは、この時期になると世の中にカボチャモノが出回って、かつ仮装用品が店先に並んだりしている事だけだ。そして、トリックオアトリートと言えばお菓子がもらえる(らしい)という事だけ。
「…本当に思いつきを口にするよね、君って」 
 気を回して損した。
 ぶつくさ言っている雨竜に、一護は問いかける。
「それ、どういう意味だ?」
「それってドレだよ」
「ん、トリックオアトリート」
「本当に何も知らないで口に出してたのかい?」
「うん」
「…………」
 真顔で頷くと、雨竜の目が露骨に「呆れた」と言ってくる。そして、ワザとらしい溜息をついてから説明し始めた。
「あのね、ハロウィンって言うのは万聖節の前夜祭で――」
 
 なにやら細かく説明してくれているらしいことは解る。けれどもあまりに詳しすぎて、途中から一護の集中力は完全に切れた。

 雨竜の説明は右から左へと素通りしていく。
 その声が、耳に心地良いのもいけないのだろう。
 眠くなってきた。

 トロンとした目をしだした一護に気付いて、雨竜は目くじらを立てる。
「ねぇ。人が説明してるのにちゃんと聞いてないだろう、君!」
「あ~悪ぃ」
「悪いって思うならちゃんと聞きなよ」
 本当、説明損だよ。
 またもやぶつくさ言い出す雨竜に
「んで? お菓子渡さないとどうなるわけ?」
 素朴な疑問をぶつける。お菓子を渡すものだ、と言う知識があるだけで、そうしなかった時にどうなるかなど知らない。
 ――多分、イタズラされるんだろうな。
 そうは思うものの、なにか決まった儀式があるのかもしれない。そう思って訊ねてみたのだが
「え? えーと…どうなるんだろう」
 当然知っていると思われた雨竜の口からは答えが出てこなかった。

「俺の知らないことは全部知ってろよ」
「無茶言うなよ、黒崎一護」
「まぁ、順当にイタズラされるんだろうな」
「多分ね」
 気のない返事を返した雨竜は、また裁縫に戻ろうとしてしまう。
「トリックオアトリート」
「だから、お菓子はもう出したじゃないか」

 またしても呟かれた言葉に言い返そうと顔を上げた雨竜の目の前に、一護の顔があった。

「え?」
 目を丸くした雨竜に、僅かに首を傾けて一護は唇を寄せる。
「くれないなら、俺からプレゼント」
「っ?!」
 柔らかく唇を塞がれ、次いで歯列を割られて差し込まれた舌の先に甘く固い物がある。慌てて身体を剥がして唇を押さえた雨竜は、口移しに食べさせられた物でモゴモゴと口を動かしながら言った。
「な、カボチャキャンディ?」
「そう。さっき駅前で貰ったんだ」
 あんま、イケてないよな。
 真顔で言う一護に赤面するやら脱力するやら。ひとしきり百面相を披露した雨竜は、最後に溜息をついて肩を落とした。
「なにを考えているんだ、君は…」
「いや、特に何も」
「……だろうね」

 なぁ、なにか面白いことねぇの?
 そんな事を平然と言う一護に振り回されっぱなしの雨竜は、いつしか一護に泡を吹かせてやろうと計画を練り始めた。





PG_Style/室井アリア様
--------------------
■おぉ…お…ハロウィン万歳!!!あちこちでフリーDLやってるよ!うひひ。そんな訳で、室井さんのハロウィン小説攫って参りました…!
■サイトの方はまたモーレツな更新の嵐…の予感です…!室井さんスゲー!これからも楽しみです~♪
Comment
  Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
Trackback
トラックバックURL: