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2024年05月19日
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室井アリアさま・そのよん

2010年03月22日
一護誕生日フリー配布のイチウリ小説ですよ~!キュンってきた!
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Mahalo Kamalo




「何度も言っているように、君の感情と僕の感情は全く関係のないものだ」
「関係あるって。嫌われてるって思ったら良い気持ちはしないだろ。でも好かれてるとなりゃ悪い気もしない。人間てそんなもんだろ」
「単純だな、君は」
「オメーが複雑に考えすぎなんだ」
 一護の性格は、雨竜にとって羨ましくもあり、同時に疎ましいものだった。
 気がつくと人に心を許されているなんて羨ましい性格だ。一護も雨竜も取っ付き難い、と思われがちなのは変わらないのに、何故か一護の方が明らかに周囲に人間が多い。明るい人物が多いから、友人が友人を呼ぶのだろう。
 自分にはあまり係わり合いにならないで欲しい。
 彼との付き合いにおいて、それが最初に感じたことだ。強く引かれると同時に強烈な反発心が芽生えた。
 天邪鬼な性格だからだろうか。
 それとも、可愛さ余って憎さ百倍というやつか。

 下手に嫌いじゃないだけに、迂闊なことを言って煙たがられるのも嫌だった。 
 一護の態度を見る限り、しばらくの間はある程度の発言までは許してくれそうだとは思えたのだけれども。

「じゃぁ、毎日言えなんて言わないから」
 一護はこんな場面でも簡単には引き下がらない。
 無理だから、と周りが止めでもしない限りは必要に食い下がってくる。
「毎日なんて御免だよ」
「だーから! 毎日なんて言ってないだろうが」
 猛烈アタックに挫けて首を縦に振ったが最後、一護は雨竜が自分のことを本当に好きなのかどうか連日確認しようとしてくる。
 言われれば言われるほど嫌になって口を噤む雨竜と、なんとかして聞き出そうとする一護。
 2人の攻防は熾烈を極めていた。絶対に言うものか、と言った雨竜に一護は言う。
「毎日なんて望んでない。だからその代わりに」
 誕生日だけは、うんとたくさんの言葉をくれ。
 一護はそう言って、真剣な目をした。

 なんてワガママでどうしようもない願いだろう。
 もっと望めば色んな物が手に入るだろうに、無欲にもそんなことを言ってくる。
 それとも、これが一番入手困難な物なのだろうか。
 雨竜は自分の喉元に手をやる。
「ん? 喉痛いのか。夏風邪?」 
 一護はそう言って自分も喉を押さえた。
「違う。」
 風邪をひいているだけならば、治れば声は出る。でも、心に引っ掛かって出ない声はそう簡単には発せられない。
「難しいな……」
 唸る雨竜に、一護は眉をピクリと動かした。
「言葉か。うーん」
 頭に浮かんでも、口から出ないなら意味はない。
 口に出せない言葉なら、文字にしてみるという手もある。でもそれは、相手に渡す前に自分でもう一度確認作業をするということにもなる。場合によっては、飛び出てしまった言葉と違って我に返ってしまう分届けることが難しそうだ。
「どうしようかなぁ」
「そんなに言いたくないのかよ」
「うーん、うーん」
 唸り続ける雨竜に、一護は苛々した声を上げる。
「そんなに俺が嫌いか」
「嫌いじゃないよ。好きだって」
「…………」 
「ただ、言葉にするのが苦手なだけで――って黒崎? どうしたんだ」
 反応がなくなったことに疑問を覚えて一護を見ると、真っ赤な顔で俯いていた。
 考えながら返した言葉だったから雨竜は何を言ったかの自覚はない。
「言えるんじゃねーか……」
 モソモソと言ってくる一護に不思議そうな表情を返し、そのまま首を斜め45度に傾けたままの雨竜は言う。
「あんまりたくさんは言えないけど、それでも良いかい?」
「良いも悪いもないだろうが」
 聞きたいって思ってたけど、いざ言われると恥ずかしいもんだな。と言うまだ赤い顔の一護を無視して雨竜は尋ねる。
「で、君の誕生日っていつ?」
「7月、15日」
「15……あぁ、だから一護」
「ちっいや、違わねぇけどッ! いきなり名前呼ぶなよ、心臓に悪い」
「名前なんて呼んでないよ」
「呼んだって!」
 年に1度くらいは目一杯努力して言ってみようか。
 7月15日。
 雨竜は仕方がないな、と顔に書いてみせる。
「それじゃ、その日まで待ってよ」
「その日って」
「だから、君の誕生日」
 僅かに微笑んで見せる雨竜に、一護は困惑したような弱い笑みを浮かべるだけだった。


 ***

 そして今日は一護の誕生日。十二時を少し回った所だ。時計を見上げながら雨竜は電話を手に取った。
 呼び出し音に、少し緊張する。
 自分から電話をかけるのは初めてだった。
『もしもし』
「誕生日おめでとう、黒崎」
『石田!?』
「そうだよ。君、僕の家の電話番号登録してないんだね」
 電話の向こうで一護が飛び起きたのが解った。
「それから、生まれてきてくれてありがとう」
『バッ!!』
「あと、死神になってくれて、有難う――って言うのは変だな。でも、君があのままだったら話しかけるチャンスはなかっただろうし、今みたいに話すこともなかっただろうからね。有難うって言っておこうか」
『ちょ、テメ、泣かせること言うなよっ』 
 一護の声は、確かに震えている。
 単純だ。
『クソ、そんなこと言われると滅茶苦茶会いたくなるぞ』
「うん、でも夜中だからムリだね。残念だ」
『残念なんて思ってないくせに。普段だったらムリヤリ押しかけてやろうと思うところだけど、明日は家族とお出かけ予定だぜ。絶対に抜けられねー。誕生日くらい自由にさせてくれよ』
「誕生日だから、家族で祝おうって言うんだろ。仲が良くて良いじゃないか」
『あぁ、まあなぁ』
 がっくりと項垂れているのであろう一護を想像して雨竜は笑いを噛み殺す。
「そんなに会いたいって言うんなら、僕も誘って良いかどうかご家族に聞いてみれば?」
 冗談で言ったのに一護は本気にした。
『そうだな! そうだ。聞いてみよう』
「え?!」
『じゃぁ、朝一で聞いて、大丈夫だったら電話するから!』
「大丈夫じゃなくても教えてよ。こっちも予定があるんだから」
『解った。それじゃ、また朝』
「うん。それじゃね。おやすみ、黒崎」
『じゃな』
 多分あの家族は雨竜を嫌がったりはしない。自分だから、というのではなく、一護の友達全般に寛容なのだ。
 もし会うことになるとしたら、何も持っていかないわけにはいかない。
 2人きりだったら、リボンをかけて僕をプレゼント、なんて冗談も出来るが、家族の前じゃムリだ。
 この前一目で気に入って衝動買いした布がある。お弁当を入れる巾着くらいだったら、あげても使い道があるから迷惑にはならないだろう。色だって、雨竜にしては珍しく明るい色味だった。
「巾着くらいなら、30分もあれば出来るかな」
 早速裁縫道具を出しながら、雨竜は頭の中でデザインを練り始めていた。




PG_Style/室井アリア様
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■室井さんの一護誕生日フリー小説頂いてきました~!ありがとうございます!!!つか室井さんってどっからこんなにネタ生み出してるんだろう…;
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