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誕生日ぐらい、甘やかしてヨ。



■プレゼントにはお一つ■



「しつこいですよ。何度頼まれようが無理なものは無理です。」


淡々と。
きっぱりとした、だけど強い口調でセバスちゃんは纏わりつくアタシを振り払いながらそう言った。


その振り払い方も尋常じゃないぐらいの力で、正直かなり痛い。
だけどだけど、こんなのはもう慣れっこで。
ここでめげたらアタシの名が廃る、なんてバカみたいな事を考えながらもう一回アタックをする。
（アタシって・・何気にけなげ。）



「いいじゃない、誕生日ぐらいデートしてくれたって！！別に減るもんじゃないでショ？！」



そう、今日はアタシの誕生日。
冷たい目線でセバスちゃんは、「そもそも死神に誕生日など存在するのですか？」なんて言ってくるけど。
実は存在しまス。しっかりしちゃいまス。



だから、いつもは絶対にしてくれないってわかってるけど。
今日ぐらい、「誕生日」って単語を出したなら・・デートしてくれるかなぁ、なんて。
そんな淡い乙女心をセバスちゃんは見事に踏み躙ってくれた。
（全く、どこまでも強情なんだから。）


いつもとこれっぽちも変わらない酷く迷惑そうな態度と対応。
へこんでないけど、別にへこんでないけど。
・・・だけどちょっと寂しい、とか思っちゃうのは仕方が無い事で。



（・・・・寂しい、かぁ）





「・・・ねぇ、セバスちゃん・・お願いヨ。
豪華なプレゼントも、なにもいらないから。
・・・ただ、一度でいいからデートしてみたいの。
二人きりの甘い時間を過ごしてみたいの。」


—愛するヒトと、生まれた日を過ごしたいの。




自分でもよくわからないけど、気が付いたらそれこそ真剣に。
そう、真剣にそんな事を口走っていた。


普段の軽い調子が急に変わった事に、セバスちゃんは少なからずとも驚いている・・
様に見えた。確かに。


だけど、



「・・ですから、しつこいと何度言えば分かって頂けるんですか？
それに私と貴方が『甘い時間』などと・・考えるだけで反吐が出ますね。」


吐き捨てる様に呟かれた言葉も、これ以上に酷い事もたくさん、たくさん言われてきたのに。
・・・それなのに。




（酷く酷く、悲しくて、切なくて。）




「・・・あははっ。確かにそうよねぇ。冗談ヨ、冗談。
あ、でもケーキぐらい作ってくれたっていいんじゃないのぉ？
まぁ気長に待ってるワ。
・・じゃあまたネ、セバスちゃん！」


無理に笑うだなんて、まるでアタシじゃないみたい。


嫌でも潤む視界を振り払って、駆け出そうとした。・・なんでもないように。
（それなのに、）





「グレルさん。」





静かに紡がれた名前に、ドクンドクンと心臓は高鳴った。
ゆっくりと振り返った・・・—刹那。





（チュ、）






「・・・・・・・・・・・。」


「・・・・・・・・・・・・へ？」





確かに響いたリップ音が意図するモノに、アタシはしばらく方針状態。
（え・・だって、・・・・え？！）




もしかしてもしかしてもしかすると、アタシ・・・今キスされたの・・・？



「セバスちゃんに、キスされたの・・・？」


思わず言葉にしてしまった事実に、一瞬で胸が喜びいっぱいになる。
だってどうしよう、嬉しすぎておかしくなりそう。





「・・プレゼントは、それ一つで充分でしょう？

デートの代わりで、許して下さい。」



顔を背けながらそんな卑怯な事を口にするセバスちゃんは、しごく迷惑そうなご様子だったけど。
けれども、



「・・ありがとう、セバスちゃん。」



一番の幸せを感じた誕生日に、アタシは笑った。




プレゼントにはキスをお一つ。
（誕生日ぐらい、甘やかされました。）





「なんだかんだいって愛するアタシの誕生日を心の底から祝いたかったのネ！
んもー！！セバスちゃんの、て・れ・や★」


（そんな事を言ったら、「面倒事を早く片付けたかっただけですよ！」って・・
顔面にガキンチョのおやつになる筈だったケーキを、押し付けられた。）




fin.


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「自分の誕生日にデートをねだるグレルと迷惑こうむるセバス」がリクエストでした！
タツマさんのグレルは乙女度が高くて、胸きゅんきゅんさせてるの見てわたしまでキュンキュンします(笑)このセバさんはもうグレさんラブなのを認めたくないだけですよ！！！だってケーキまで(顔面にだけど)くれるんですものーキャッホー！(笑)
ほんとにほんとに、ありがとうございました…！！！