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2024年05月19日
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頂き物:藤崎葵様(そのいち)

2010年02月26日
かすみ工房/藤崎葵様から頂きましたっ
閃×山です。むふむふ。
―――ガララッ。
「ただいま!」
 自宅の引き戸を開けながら元気良く声を掛けたのは、学校から帰宅した大樹だった。
(…あれ?)
 しかし、大抵は出迎えてくれるはずの朱門の不在に思わず首を傾げる。いつもなら帰宅したばかりの自分を呼び止め茶を勧められ、今日の出来事(主に閃の起こした問題について)など聞かれたりするのだが…玄関先は静まり返って人の気配は無かった。まぁ、この時間なら道場の方に居ても不思議はないのでそう納得した大樹は、靴を脱ぐと足早に自分の部屋に向かおうとした―――が。
 廊下を歩いて居間を横切った時、少し開いていた扉の中に人影を見た気がして立ち止まる。すると其処には、瞑想でもしているのか…正座をしたまま微動だにしない朱門が居た。
「あ、おじいさん」
 居たんだ…と少しホッとした気分になった大樹だが、どうにもおかしいその様子を疑問に思う。朱門が瞑想していると思った大樹の考えは間違いで、彼は孫の閃より更に強い眼光で一点を見据えたまま鬼気迫る雰囲気を醸し座していたのだ。そのタダ事じゃない雰囲気を見て、大樹は閃がまた何か問題を起こしたのでは…と考えてしまう。
「ど、どうしたんですか?あの…閃くん、また…?」
 今日の学校では何も無かった筈なのに…と気を重くした大樹は、他に何か問題点が無いか模索し始めた。確かに学校で揉め事はなかったが、何か用事があると言って自分より早く帰途についた閃は何をしでかしたというのだろう。
(あ…その、用事って言うのが問題だったのかな)
 一時でも目を離すと何をしでかすか分からない閃に、頭痛を感じながら問い質そうとした大樹は、其処で未だ嘗て無いほど大きな問題に直面することとなる。
「閃が…―――部屋に女の子を連れ込んだんじゃ…」
 そう低く呟かれた言葉はどんな拳よりも重く、大樹を奈落の底へ突き落とすものであった。

 

―――その頃。
「へー。やっぱ男だと、この辺の肉の付き方とか違うんだ…」
 ふんふん、と納得するような素振りをみせる山田に、閃は居心地悪そうに身じろぎをした。実際、自分の体を他人に至近距離からジ~ッと見られては、そういう事で喜ぶ趣味が無い限り閃だって居心地くらい悪くなるだろう。
「………くすぐってぇよ~」
「うるせぇ、黙ってろ」
 だが、泣きの入った台詞に対して山田の言葉はにべもなかった。そりゃ…本気で許して貰えると思って言った言葉じゃないけれど、それにしたって色気も素っ気もありゃしない。年頃の異性が二人きりで密室に居るという状態は、この二人…少なくとも山田には何の影響も与えなかったようだ。
 それどころか山田は閃の態度に不満があるらしく、食い入るように観察していた上半身から視線を外すと上目遣いに睨み付ける。
「責任取るっつったのは、お前の方だろうが」
 それは閃が山田との試合の後に言った言葉だ。知らなかったとはいえ女の子にあれだけの事をしたのだからと、閃が一応お詫びとして言ったものを盾に取って山田が切り出したのは「男の体のつくりをじっくり知りたい」と言うもので…。
「だからって…筋肉の付き具合をじっくり見たいっつーのもどーよ?」
 一瞬だけ、閃…というか一般的に男としてはイヤに期待させる条件だなぁ~と思いつつ二つ返事で引き受けてみれば、部屋に入るなり「取り敢えず…」と上半身を剥かれ筋肉の付き方を観察されるという憂き目に遭っていた。
「しょうがねぇだろ。鍛えた男の体を間近で見る機会なんて滅多にねぇんだから。…それに、道場の連中になんか頼めねぇよ。お前くらい鍛えてないと参考になんねぇし。―――じっくり研究して今度こそ勝ってやるからな」 
「いや、そーじゃなくてだねぇ…」
 どうやら愉しそうに「クビ洗って待ってろ」と言う山田には、閃の意図が伝わってないらしい。年頃の男の子がこれまた年頃の女の子と二人っきりで、更に片方は半裸状態で「何も起こらない」と思ってるのは山田くらいだろう。そりゃ閃だって、脱いでくれるのが山田ならモンクはないのだが…。
「なんだよ。俺が話した時は二つ返事でOK出したじゃねぇか。お前が制服じゃイヤだなんて抜かすから、こっちはわざわざこんな格好してるってのに…」
 それを聞くと閃も耳が痛い。学校帰りと言う事で、制服姿…当然女子である山田はスカートをはためかせて閃の前に登場したのだが、その姿に触手の動かなかった彼は彼女の望みを叶える前に注文を出したのだ。そうして現在、山田は前に閃と相対した時と同じ格好をしている(勿論閃は着替え中外に放り出された)のだが…正直なところ、そのままかぶりつきたい衝動を抑えるのにかなり苦労していた。
 何しろあれだけの手強さを持つ山田だ。うっかり飛びかかろうとするもんならノーモーションのあの動きで、かなり痛い目を見るのは間違いない。
「いや~、だから…」
 何と言ったら良いものか閃は悩んだ。まさか、自分も山田の体を観察したいとは言えないし…。
「―――俺も、もう少し鍛えてこの辺りの肉も引き締めようかな…」
 しかし、閃が悩んでいるウチに山田は飛んでもないことを言い出した。この辺り…と言って山田が示した場所に閃は衝撃を覚える。
「もったいねぇ!おっぱいはそのまんまでもいーじゃんかっ!」
 思わず力一杯主張すると、流石の山田も感じるものがあったらしい。
「さっきっから、やたらと胸の方ばっか見てると思ったら…」
 そういうことだったのかよ、と睨むところに山田の憤りが見える。
 …実は本人も少し変だと思っていたのだ。服を剥いた体を間近から真剣に観察していた時、どうにも胸の辺りに纏わり付いていた閃の視線…。
 最初は、自分が屈んでいる所為で俯いた閃の視線がたまたま其処に行くのだと思っていたのだが…実際はしっかり意識して見ていたらしい。
 此処で呆れはしたものの大して怒らなかったのは、閃が山田のことを女だからと言ってバカにする人種じゃないからだ。単に「おめーは女じゃん」と言われれば山田は頷くしかない。だからといって「胸に余計な筋肉つけるなっ」と言われて頷けるものではなかったけれど…。
(俺の胸のサイズをお前に指図される謂われはないっつーのっ)
 山田の主張としてはこんなものだったが、閃の言わんとしていることは分かった。
「お前…『俺』が、この格好してるってのに変なこと考えてたのかよ?」
 バンダナで髪を上げ、色気も素っ気もない稽古着を着ているのに?と山田の弾き出した答えに、腕組みした閃は明後日の方向を向いて知らん顔を決め込んだ。その顔を見れば肯定しているのは一目瞭然で…山田はあきれ果ててものも言えない。
 しかし其処で山田が怒って拳に訴えなかったのは…実はある秘策があったからだ。その事に絶対の自信を持っていた山田は、ニヤリと笑って誘いを掛けた。
「良いぜ。触っても」
「えぇっ!!ホントか!?」
 不審な微笑みを浮かべて挑発する山田の意図は分からない。だが折角のチャンスを棒には振れない…というか思いっ切り煽られてしまった閃は、わきわきと動く手を押さえようともしないで山田に突進して行く。
 ―――が。
「…ねぇっ!?」
 其処にあるはずのものを発見できず閃は驚愕した。そう、其処には閃が期待していたような膨らみは無く、無機質で固い感触があるだけだったのだ。
「お…おいっ山田!おっぱいねぇぞ!!」
 瞬時にパニックに陥った閃は、手の感触を何度も確かめながら慌てふためく。だがそんな時でも、山田は余裕の笑みを崩さないで得意げに言った。
「―――バカ。サラシ巻いてるだけだっつーのっ」
 どうやら、前に試合で触られたことを考えて山田なりに準備していたらしい。がっちりと幾重にも巻かれたサラシを見せつけられ、簡単に解けそうもないそれに閃は愕然とする。そうして直ぐに、自分がサラシを解くのが先かそれとも山田が自分をぶち殺すのが先か考えてみるが…どう考えても後者の方が早そうだ。
 でも「種明かし」と言わんばかりにアンダーシャツを剥ぐってサラシを見せてる姿に危機感は全くない。まぁ、山田の実力ならば此処で普通の女性のように「襲われる」というシチュエーションを、自分では想定できないのも分かる気はするけれど…。
「おっぱい…フカフカのおっぱい~…っ」
 己の負けを悟った閃は掌を胸の形にして涙を流さんばかりに残念がるけれど、それを見て流石の山田も背筋がうすら寒くなってきた。
「―――しつけぇよっ!!これだから男は…っ」
 いっそ胸でカオを圧迫して殺してやろうかと、閃が聞いたら「ぜ・ひ・にっ!」と立候補しそうなことを考えたが、生憎それが出来るほど自分の胸が大きくない事を知っている山田は他にどう報復してやろうか悩む。
 しかしその考えが固まる前に、閃の方が動いた。
「いーや!めんどくせぇっ」
 言うなり、戸惑っている山田を無視して手足を伸ばしながら畳に寝転がってしまったのだ。
「皇っ!?」
「俺ャもー寝るっ。おめーは勝手に筋肉でも何でも見てろや」
 驚く山田を余所に、当の閃は本気で寝入ってしまったではないか。
「………マジかよ」
 半信半疑でポツリと呟いた山田は、それでもぐぅぐぅと寝ている閃に目を遣ると…結局観察を続行することにした。どうせ起きていてもくすぐったいだのなんだのモンクを付けられるならば、眠っている間に目的を達成してしまった方が気が楽だ。そう考えると、胸の辺りの観察は先刻じっくりさせて貰ったので、今度は背面からその体付きを見ようと仰向けになっていた閃を横倒しにしようとする。
 しかし、其処で思わぬ出来事に遭遇した山田は困ってしまった。
 ひっくり返そうとした閃の体が、何が悪かったのか…重心を変えた拍子に山田の方へ寄りかかるような体勢になってしまったのだ。
「…ちょ…おい…ってばっ」
 何とかそのまま倒れ込むのを堪えた山田だか、眠って力を抜いている体は妙に重く感じる。
 これは支えきれないと思って早々に閃を起こそうとしたけれど、本気で眠っている彼はまったく起きる気配を見せない。イヤ…それどころか無意識の仕草で体勢を変えた閃は、すやすやと安らかな寝顔を山田の胸元に擦り寄せるようにしてきたのだ。
 これは流石に山田でも耐えられるものではなかった。いくらサラシで巻いてあるとはいえ、胸に擦り寄る男を放置するのは躊躇いがあるのか…それとも一応女の部類に入る山田としては、こんな無防備な閃を見て心動かされるものがあったのかも知れない。
「ち…くしょ…。―――おいっ起きろ!すめら…っ!?」
 しかし、大きな声で呼び起こそうとしたところで山田は自分を襲った出来事に硬直してしまった。でもそれは一瞬で…自分の感じた感触に恐る恐る見てみれば、何といつの間にやらアンダーの下へ入り込んだ閃の手が、山田のサラシを解いて胸を探り始めたのだ。
「てめ…っ!起きてるだろーが!!」
 眠っていると思って油断したのが運の尽き…というのは微妙だが、かなり大声で山田が呼びかけても閃が起きる気配は無い。そうしている間にも、サラシを粗方解いてしまった閃の手が不埒な動きで胸を弄っている。
(こいつ…マジで眠ってんのかっ?)
 思わず見事な熟睡っぷりと鮮やかな手付きに感心した山田だが、実際はそんな場合じゃなかった。何しろ、こうしてる間にも閃の手はあらぬ動きで山田から気力を奪っていく。しかし、本気で眠っているらしい閃を叩き起こすのもどうかと躊躇してしまうほど、山田の胸に顔を埋めてすりすりと擦り寄っている彼は無防備で幸せそうだ。
 ところがそんな時間も長くは続かなくて…それは、閃が寝言のように呟いた一言で霧散してしまった。
「………なまちちぃ…v」
「―――!!!!」
 結局それかよ!!…と山田が心で罵倒したかは分からないが―――少なくとも昼寝のつもりで寝た閃が、うっかり、一生眠るのではないか?という目に遭ったのは間違いないだろう。

 

 …その時。
 大樹は自分の部屋のドアを少し開けて、その向かいに位置する閃の部屋の様子を窺っていた。
『閃が…―――部屋に女の子を連れ込んだんじゃ…』
 おじいさんが呟いたその言葉は、未だ大樹にショックを与えている。
(閃くん…っ。君がそういう奴だったなんて…!!)
 当然其処からでは中の様子を見られないし、会話だって大きな声のものしか拾えない。けれど一歩どころか二歩も三歩も自分より先を行く閃に、嫉妬する気力も持ち合わせていない大樹は覗き見すら出来ず、かなり陰気に様子を窺っていたのだ。
 しかし、そうしているウチに何かを打ち付けような音を聞きつけて肩を竦めて硬直した。
(まっ…まさか、閃くんが女の子に乱暴してるとは思えないけど…っ)
 様子を見に行った方が良いのか、けれど行けば邪魔をすることになるんじゃ…と真剣に悩んでいると、突然部屋のドアが開かれ制服姿の女の子が一人出て来る。
 そして大樹は、彼女の様子を見て胸を撫で下ろした。出てきた女の子はひどく怒っている様子だが特別乱暴された様子もないし、勿論(着替えたので)着衣に乱れも見られなかったのだ。そうして彼女は、些か乱暴だが礼儀正しく階下に居た閃の祖父に挨拶すると、凄い勢いで出て行ってしまった。
 しかし大樹は女の子が機嫌を損ねて帰って行ったという状況に、やはり閃も只の格闘バカだったんだと安心する。そうして見送りにも出てこない閃に対し、きっと彼女の機嫌を損ねて落ち込んでるのだろうと思って何処か微笑ましいような気持ちで彼の部屋を尋ねたのだが…其処で見つけた意外な物に驚愕してしまう。
「閃く~………ん!?どうしたんだよ、その格好!!」
 その部屋の中には…どう考えても数十発殴られた後、サラシでグルグル巻きにされた閃が寝惚け眼で転がって居たのだ。
 そうしてそんな目に遭ったにも関わらず、何処か幸せそうな彼から出た言葉は―――。
「おっぱいふかふかぁ………」
 という、まったくもって懲りない言葉であったという。
―――余談だが…それを聞いてあらぬ誤解(?)をした大樹は、それから暫く閃を見る度に顔を赤くして不審がられるのであった。


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■かすみ工房/藤崎葵様vvv
■「スクライドの入稿終わったらこれ見て山田くれ!」と第21~24話のコピーを渡したら……!わずか2日でこのような素晴らしい閃×山小説があ~~~!!! かわええヨ~~~★藤崎さん愛してる…!ありがとうございました!
■藤崎さんはジャンプ読んでらっしゃらないのですが、私のあまりの山田フォーリンラヴっぷりを見て単行本1巻買って下さったいい人です(笑)。1巻には山田1コマしかいないけどな~;
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